小原愼司の新刊「地球戦争 第1巻」の巻末に小原愼司とトニーたけざきとの対談が収録されているのだが、その中で小原愼司が出世作である「菫画報」について語っている。「菫画報」のファンとしては大変貴重な情報なので一部書き出しておく。
地球戦争 1 (ビッグ コミックス)posted with amazlet at 13.04.05小原 愼司
小学館 (2013-03-29)
売り上げランキング: 972スピリッツ編集者(以下スピ):93年に賞取った(引用者注:1993年に小原愼司は「お姉さんといっしょ」でアフタヌーン四季賞・春の大賞を受賞している)あと、『ぼくはおとうと』を飛び飛びにやって、それを1冊にまとめて、その後に『菫画報』ですね。
小原愼司(以下小原):『ぼくはおとうと』は喜劇として描いていたんですけどね。
トニーたけざき(以下トニー):ギャグのつもりやったん?
小原:ギャグというかコメディーですね。笑いもやりつつ、シリアスなストーリーもやる、という。『寺内貫太郎一家』とか『時間ですよ』の演出家の久世光彦さんがすごく好きで、あんな感じでやりたいなと。
スピ:『菫画報』もコメディーでしたね。
トニー:なんか変な載り方してたよね。
小原:ネーム描いて、通ったら載せるというやり方でやってて、3話か4話やった所で連載にしようって話になりまして、その時に「部活の内容をスポーツに出来ないか?」って言われたんですよ。演劇部じゃなくて何かやって勝負がついて、っていう題材はないか、と。
スピ:「勝負する」っていうコンセプトがあったんですか?
小原:そう。その方が続けやすいだろう、って。そこで僕が困り果てて、もうホントに無理だ。と思って、スポーツに何もアイデアがないんですよ。
スピ:『菫画報』って何も起こらないのがウリでしたもんね。『けいおん!』を20年先取りしてたという!
小原:一応、水泳部でネーム作ってみたんですけど、そしたら担当さんがそれを一読して「うん、小原さん何度も無理だって言ってたもんね」って(笑)。「ああ、コイツじゃない」って思われたんでしょうね。結局『菫画報』は新聞部の話になったんだけど、その時の担当さんは後に『おおきく振りかぶって』をやってますからね。ああいう事がやりたかったんでしょうけど、ボクにはできなかったんですね(笑)。
スピ:キャラクターが出来てたから演劇部だろうが水泳部だろうが新聞部だろうが、題材を色々変えられたんですね。
小原:キャラクターは、太宰治の『グッドバイ』っていう未完の作品が元ネタです。この作品はラブコメなんですけど、ものすごい色男が、今まで付き合ってきた女性との関係を清算しようとしてフッて回るんですね。で、別れ話に説得力を持たせるために物凄い美人だけど背が高くて怪力の女を連れ歩くんです。最初は男の方が立場が上なんですけどだんだん逆転して行って、最後は女に敬語を使うようになるんですね。これがメチャクチャ面白くて続き読みたいんですけど太宰が自殺しちゃってるんで、自分で続き作ろうと思って、それで考えたのがスミレです。
トニー:それで背が高かったんや。
「地球戦争」小原愼司 小学館 2013より
「菫画報」は講談社「月刊アフタヌーン」1996年から1999年にかけて連載していた、とある高校の新聞部の奇妙な日常を描いた作品。単行本はアフタヌーンKCとして全4巻で発売された。アマゾンのマーケットプレイスで入手可能。
対談中で、小原愼司が「菫画報」の元ネタとしてあげている「グッドバイ」は朝日新聞に連載中に太宰が自殺したため未完で終わった遺作。青空文庫で読むことができる。
青空文庫 図書カード:グッド・バイ
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